SAYONARA
「入る? 中は静かだからそこで話を聞くよ」

「でも、お姉さんの家なんですよね」

「俺も住んでいるし、大丈夫だよ」

 家の中に入ると、黒の革靴を脱ぐ。彼はあたしの答えを聞く前に家の中に入ってしまった。

 玄関先は靴箱と、数足の靴があるだけで殺風景なものだった。目の前には玄関と垂直に交わるような廊下がある。お洒落な雰囲気のお店とはかけ離れた地味な造りだった。

「実家がお店をされているんですか?」

「居候をしているだけ。ここは姉貴の旦那さんの家」

「そうなんだ。その高校ってK高校?」

 そう思ったのは彼の制服からだった。
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