SAYONARA
「そう」

「意外と頭いいんだ」

「意外とは余計」

 思わず口を押さえる。

 彼はそんなあたしの言葉を気にしていないのか、顔色一つ変えずに目の前の障子をあける。

 彼の後姿を見て、先ほどとは違う勇気を言葉にする。

「さっき失礼なことを言ってごめんなさい」

 彼は肩をすくめると笑っていた。

「気にしなくていいよ。この前のテストは赤点取ったし、偉そうなこと言えないんだけどね」

 初めて話をしたときと、同じ雰囲気を感じる。

 優しくて、穏やかな感じ。

 やっぱり美枝が優しい笑顔を浮かべていた気持ちが分かってしまう。

 彼の性格は、見た目の派手な顔立ちとは一線を駕していた。

「何かケーキを食べる?」

「え?」

 驚きの声をあげて冷静になる。彼の家とはいえ、同じ敷地内に入ってきたのだ。
 何かを注文しないといけないのだろう。
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