SAYONARA
「向こうのほうってもっと数多くの学校あるのに、なんでわざわざこんなところ選んだのだろうね」

「変わってますよね。これくらいのレベルの学校ならいくらでもあるだろうし。あの成績ならもっといい高校も狙えたと思うんだけど」

 あたしたちが通っている高校は平均より少し上のレベルの普通を絵に描いたような学校だ。

新設校だったり、進学率が特別良かったり、制服が可愛かったりといった特別なところもない。

 そんな他愛もない事を、一応功には教えておいた。

 彼はそんなことでも嬉しそうに「ありがとう」と言っていた。

 それから一ヵ月後の夏休み明けにさっきのように二人が一緒に歩いているのを目撃したのだ。


 扉が開きっぱなしの教室の中には、既に功の姿があった。彼は補習の英語のテキストを開き、難しい顔をして眺めている。

 あたしはため息を吐くと、功の隣の窓際の席に行き、鞄を置く。椅子を引くと腰を下ろす。そこがあたしの席だ。
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