SAYONARA
「じゃあ、この前と同じものを」

「同じものは無理だけど、適当に持ってくるよ」

 そう言うと彼は部屋の奥に消えていく。

 それがお店とは逆方向だということは分かった。

 彼がお店から家に入っていったのを考えると、お店とはつながっているのだろう。

 あたしは一息つき、何気なくあたりを見渡す。あたしがいるのは部屋の中央のローテーブルのそばだ。右手にはテレビが置いてあり、左手には緑のランプをともしたパソコンが置いてあった。

 功以外の男の人の家に入ったのは初めてだった。美枝の友達ということを抜きにしても、不安や恐怖心などは感じない。それだけの雰囲気を彼が放っていたからだ。
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