SAYONARA
 フローリングの床がきしみ、お盆を持った彼が紅茶の芳ばしい香りと共に再び現れた。それをテーブルの上に置く。

 彼が運んできてくれたのは生クリームがたっぷり入ったロールケーキと、四角形のチョコレートケーキだった。チョコレートケーキの外郭はチョコで固められ、その上には生クリームがのせてある。

 さっきまで考えていたこともわすれ、思わず目の前のケーキに目を奪われる。

「好きなだけ食べて。希望があればお店のケーキも持ってくるよ」

 あたしはフォークでケーキを切ると、口に運んだ。

「おいしい」

 思わずそんな言葉が漏れる。見た目からは口の中がとろけてしまいそうな甘さを想像していたが、チョコレートの苦みが強く全体の甘さを抑えていた。
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