SAYONARA
「謝らなくていいよ。俺のほうもごめん。姉に駄目だしされて、何がダメなのかさっぱりなんだよな」

「おいしいのに」

「売り物にはならないってことだと思うよ」

 あたしはその言葉を不思議に思いながらもケーキを食べ進める。あっさりと平らげてしまった。

「おいしかったです。本当に」

 考えてもダメな理由がさっぱりわからない。

 甘くなった口をほぐすために紅茶を口に含む。

「俺のケーキを食べてくれたお礼に、口直しに店のケーキでも持ってくるよ。この前のと同じので良い? おごるよ」

 おごるというのは良い響きだが、正直お腹がいっぱいだ。それに彼のケーキもあたしには満足な味だ。
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