SAYONARA
不器用な想い
 この時期の風は体の奥から熱の部分だけを奪い去るように十分冷たい。

 さすがに厚手のコートを着る気にはならなかったので制服を着ると、ジャケットにマフラーを巻いておくことにした。

 あたしの家から彼の家までは歩いて十五分ほどかかる。

 息を吐いても白くなることない。冬に比べるとまだ冷えていない時期なのだろう。それでも暑い季節を過ごしたばかりの体には十分堪えていた。

 お店の中には電気が点いていた。その前に長身の男性の姿があった。彼はあたしと目が合うと、軽く手をあげた。

「どこに行くんですか?」

「N公園」

「N公園?」

 大きい公園で、障害物もないことからマラソンコースとして活用している人も少なくない。

 あたしがその話を聞いたのは功からだった。それを教えてくれた功も毎朝のようにジョギングをしていると聞いたことがある。

 彼の口からその名前が出てきたことに戸惑いながらも、理由を問いかけることもできない。

 彼を見たが明るい顔をしている。

 悪い人ではないと思うが、何を考えているのかよく分からない。

 功だったらすぐ顔に出るから分かりやすいのにと思わなくもない。
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