SAYONARA
「智之?」

 あまり聞きなれないが、誰の声かはすぐに分かった。

 見た目よりは少し低く感じる落ち着いた声。

 だが、戸惑いを隠せなかったのか、いつもよりも美枝の声が乱れていた。

 その声の方向を向くと、美枝と功がいた。二人も今から帰る予定だったのだろう。

 彼女の視線は彼に注がれていた。

 だが、彼は軽く応じるだけで、二人のところに行こうともしない。

 不思議そうな顔をしている功に、美枝が耳元で囁いていた。

 再びこちらを見た功の顔からは驚きの色が消える。前もって幼馴染の話は聞いていたのだろう。

「じゃ、帰りますね」

 由紀子はあたしに声をかけ、その智之と呼ばれた美枝の幼馴染に頭を下げる。少し歩を進め、すれ違いざまに功と美枝に声をかけたようだった。
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