王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
隣にいるセシエルに意見を求める。
「二人ともボロボロだし、危機を乗り越えて友情が芽生えたんじゃないのかな? まあ年も近いし、一晩一緒にいれば嫌でも仲良くなるでしょ」
「男の子ってそういうもんなんですか?」
「男って単純だからね。そういうもんなんだよ」
ふーんと頷いて、エナをユリエスを見つめた。
マルタがレインに向かってなにか言っている。
目を合わせれば口喧嘩が絶えない二人。
いつもならマルタの大声が嫌でも耳に入るのだが、その怒りに満ち溢れた叫び声はいつまで経っても現れない。
距離があるせいなのだが、今からそちらに行くのも面倒くさい。
少し気になったエナは、呪文を唱えた。
「ウサギの耳」
一時的に聴覚を強化する魔法。