王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「それに今はドラゴン討伐の任務中だし、国の一大事にそんなお楽しみこいてたら他の皆に悪いというか。それに俺まだ風呂入ってないから汚い―――」
その続きは、エナの鉄拳によって遮られた。
マウントポジションを取られ、顔面を押えたユリエスが見たのは拳をわなわなと震わせる鬼の姿。
「なに間違った思考してんのよ」
「間違いを起こそうとしてるのはお前だろ!」
ブチンと、何かが切れる音がした。
「さてここで問題です。間違っているのは誰でしょうか? A.月灯りの民代表の親友である妖精のエナ。B.レインが一緒についていなければ即刻あの世逝きになっていた馬鹿で無能で役立たずの童貞ユリエス君。さあ、どっち?」
抑揚のない生気が全くこもっていない声色で出された問題。
もちろん答えは、
「び、ビーです……」
馬鹿で無能で役立たずのユリエス君。