王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
お互い冷静になると、エナをユリエスを椅子に座らせて再び上着を脱ぐよう促した。
嫌がるユリエスだが、今度逆らえば命をはないと視線で脅されて渋々上着に手をかけた。
背中に広がるの無数の傷跡。
「やっぱり、いつ出来た傷?」
「えーと、レインと洞窟で一晩過ごした時にちょっと」
はぁっと深く溜息をついて、椅子に腰かけたユリエスの背に両手をかざした。
癒しの魔法を唱える。
両手からエメラルドの光が発せられると、見る見る傷跡が薄くなっていった。
「なんであの子と一緒にいて、こんな傷を受けるわけ?」
半ば呆れた口調で問いただすが、ユリエスは苦笑して誤魔化すだけ。
あの晩に起こったことは、レインも知らない出来ごと。
それを知っているのはもちろん、当人のユリエスただ一人。