王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
まあ、どうせ一人で無茶したんだろうけど。
ユリエスのことだ。レインのお荷物にならないよう夜の警備だけは一人でやろうとした結果がこれなのだろう。
エナはもう一度溜息を吐くと、背中の傷跡にそっと手を触れた。
「いっ!?」
「あ、ごめん。痛い?」
と言いつつも、遠慮なしに傷を触る。妖精のくせに鬼畜だ。
「このくらいなら完全にとはいかないけど、私の魔法である程度は消せると思う。マルタにこのこと伝えとく?」
「はぁ!? 冗談。こんな情けないとこ見せたら、王都に戻されちゃうじゃないか!」
ユリエスは本来、王都から招集を受けてはいない普通の民であった。
王都に行きたいと願うユリエスの前にたまたま現れたマルタとエナ。
ユリエスは二人に頼みこみ王都に行くことが叶ったのだが、なぜかドラゴン討伐にも付いて行くと言い出したことで状況が変わった。