王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
元々王都までという約束。マルタはユリエスの討伐隊就任は猛反対した。
その後紆余曲折あり、半ば無理やり討伐隊に付いてきたユリエスだったが、この傷がマルタにバレればほぼ間違いなく王都に強制送還されてしまう。
なので傷のことを誰にも打ち明けることはなかったのだ。
「分かった。マルタには秘密にしておいてあげるから、私の質問に一つだけ答えて」
「なんだよ改まって」
エナは言う。
「なにがあったの」
静寂が耳に響く。
ユリエスはそのまま押し黙り、視線を下に向けたまま膝に置いた両手を強く握りしめた。
「王都を出る前あたりからかな。ユリの心に不安や戸惑いが見えるの。最初はドラゴンに対する恐怖心かなと思ったけど、どうも違う気がして……」
なにがあったの?
今一度問う。