王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
背中越しに伝わる思い。
ユリエスは言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開く。
「……なんもないよ。大丈夫だから」
答えのない答え。
納得できるはずがないが、エナはそれ以上なにも言わなかった。
ユリエスが大丈夫というのなら大丈夫なのだ。
心に曇りが見えるが、邪気は一切感じない。
そもそも、ユリが大それたことなんて出来るはずないか。
「分かった。はい、治療完了!」
ポンッと背中を叩かれるが、痛みがくることはなかった。
首を回して背中を見てみる。
視界に入る範囲では、傷跡は綺麗に消えていた。