王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「すげー。ほんと便利だよな聖霊術って」
「感謝して敬いなさい。それじゃあ私は戻るから」
部屋を後にしようと扉に手をかけると、ふと考え込むようにピタリと止まった。
そして顔だけこちらに向けると、
「疑心はふとしたきっかけで邪心に変わる。それだけは肝に銘じておいてね」
注意を促し、扉の向こうに消えた。
一人残されたユリエスは、自重気味に微笑むと天を仰いだ。
「疑心が邪心に……か」
ポツリと呟いた独り言は、夜の闇に溶けて消えた。