王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
セシエルはクククッと笑みを溢し、ベリルは肩を竦めていた。
「マルタちゃん。この吹雪でドラゴンと戦えると思う?」
優しくセシエルが諭すが、マルタの頭上にはハテナマークが浮かんでいた。
この子、この状況でドラゴンと戦うつもりだったんだ……。
天然というか頭が足りないマルタに、いよいよエナの我慢の限界が訪れた。
背後からこっそり忍び寄り、頭部に御得意のチョップをお見舞いする。
突然の痛みにマルタは蹲り頭を押えた。
うっすら瞳に涙が溜まっている。
「吹雪の中でどうやってドラゴンと戦うの。月の光が遮られるから月光術は使えないのよ」
「俺のクロスボウも、この吹雪じゃ使い物にならないし」
「足元の雪で動きが制限されるからな。私の剣術も当てにはならないだろう」
「俺は自分の身を守るだけで精いっぱいです」