王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
―――なにも起こらない。
顔を上げると、そこには見慣れた背中が立っていた。
腰まで伸びた艶やかな黒髪に透き通る二対の羽。
「エナちゃん!?」
「遅くなってゴメン。怪我はない?」
両手を突き出すエナを中心に、エメラルドグリーンの薄い膜がドーム状に展開している。
結界魔法。ドラゴンの攻撃は全てこれにより防がれた。
そして……。
「ドラゴンは一体だけだと聞いていたはずだが」
ミスリルの刀を逆手に持ち、羽をもがれたドラゴンの頭部に突き刺すベリル。
「ドラゴンってこんなちっこいの?」
ドラゴンの首根っこを掴み、それを平然と投げ飛ばすマルタ。