王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

―――なにも起こらない。


顔を上げると、そこには見慣れた背中が立っていた。


腰まで伸びた艶やかな黒髪に透き通る二対の羽。


「エナちゃん!?」


「遅くなってゴメン。怪我はない?」


両手を突き出すエナを中心に、エメラルドグリーンの薄い膜がドーム状に展開している。


結界魔法。ドラゴンの攻撃は全てこれにより防がれた。


そして……。


「ドラゴンは一体だけだと聞いていたはずだが」


ミスリルの刀を逆手に持ち、羽をもがれたドラゴンの頭部に突き刺すベリル。


「ドラゴンってこんなちっこいの?」


ドラゴンの首根っこを掴み、それを平然と投げ飛ばすマルタ。
< 135 / 209 >

この作品をシェア

pagetop