王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
青年は地に足をつけると、背中の翼が弾け無数の黒い羽が舞った。
まるで悪魔の降臨。
皆言葉を失う中、レインはただ一人青年に邪険の眼差しを送っていた。
青年はズボンのポケットに手を突っ込むと、舌舐めずりをし目の端を細める。
まるで獲物に狙いを定めた猛獣のように。
「討伐隊の皆さま、幻龍の討伐御苦労さまです。さすが精鋭と言うべきですか、不本意ながら感動を覚えてしまいました」
柔らかで紳士的な口調に緊張の糸が多少緩む。
だがそれは一時的な物。すぐに緊迫した雰囲気に戻る。
「なのでこれは私からのほんのばかしの気持ち」
青年はポケットから手を出す。
その手には異様な形をした、
「部外者には立ち去っていただきます」
灰色のマスターキーが握られていた。
【ドラゴン討伐編 完】