王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

男は余裕の笑みでそれを流すと、腰を折り丁寧にお辞儀をした。


「これはこれは申し遅れました。私の名はΩ(オメガ)終わりを告げる存在。以後お見知りおきを」


「戯言はいい。僕の質問にだけ答えろ」


「マスターキーですね? これはとある王族から譲り受けた代物です。血と涙を流しながらこれを差し出す姿は今でも脳裏の奥に焼き付いて堪らない……。
嗚呼っ! 今思い出しても愉快! 下々を見下していた貴族が、私に命乞いをする滑稽な様を貴方方にもお見せしたかった。
あれは本当に良かった。身体の芯から震える興奮。高みから蹴落される人間の絶望に満ちた表情。私にとっては至福の時と言っても過言ではない」


ユリエスに悪寒が走った。


こいつ、完全にイッてる。


「貴方方も、私を楽しませてくれますかな?」


背後から凄まじい轟音が響いた。


二人は反射的に振り向くと、背後の空間は割れており、そこから三つの頭を持ち背中に鷲の羽を生やした獣が飛び出してきた。


獣と二人の距離はないに等しい。
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