王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
オメガは二発目の弾丸を放つと、今度は地面にうずくまるユリエスの右肘にヒットした。
「うあぁっ!?」
「痛いよなぁ? だが我らが受けた屈辱はこんなものではない!
関節が砕ける感触はどんな感じだ? 生易しくて吐き気がするくらいだろ?
お友達が苦しみ姿もまた格別だよなレイン君。心が闇に染まった貴様ら一族には堪らない光景だろうに。
悲鳴と血と苦痛の三重奏は、音楽の民が奏でる演奏よりも、唄詠みの民の可憐なる歌声よりも素晴らしい。病みつきになる!
さあ、もっと私にその可愛らしい悲鳴を聞かせておくれ! マスターキーの坊や!」
三度目の銃弾は、レインが作り出した氷の壁によって防がれた。
弾丸は壁に突き刺さり、勢いをなくすとその身を重力に任せる。
レインはユリエスの傷口を一瞥すると、自分の左肩にやったように傷口を部分的に氷結させて止血を行った。
痛みのせいだろうか、ユリエスは気を失っている。
恍惚の笑みを浮かべていたオメガは興醒めしたのか、銃を投げ捨てレインに生気が宿っていない瞳をやった。
「……所詮子供か。この素晴らしい興奮と感動を理解できないとは、神への冒涜にも等しい。まあ、毛も生えそろっていない包茎坊やにはまだ早かったということか」