王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「黙れ。貴様の空疎な言葉など分からなくとも、ゲスな人間であることはよく分かった」
レインの周囲に冷気が漂う。
「その喧しい口を塞いでやる」
氷の結晶がオメガを閉じ込めた。
目にも止まらぬ早業。オメガはなにも抵抗できず、結晶の中で固まっている。
人間である以上、この結晶に閉じ込められて生きているはずがない。
人間ならば……。
レインは驚愕のあまり目を見開いた。
結晶は一瞬で蒸発し、白い靄になり姿がなくなる。
閉じ込められた本人は愉快そうに小さく笑い声を溢すと、氷の欠片が残る前髪を掻きあげた。
馬鹿な。魔物ならいざ知らず、生身の人間が無傷だと?
小さな舌打ちに、オメガは舌舐めずりをした。