王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「異常な温度差によって蜃気楼を作り出すとは本当に面白い坊やだ。だがその程度の子供騙しで時間稼ぎとは、とうとう打つ手がないということか? それとも……」
オメガはほくそ笑む。
その笑みに、レインの頬に冷汗が伝った。
「私の魔力を尽きさせようという作戦か?」
レインの表情が歪む。
図星。オメガは腹を抱えながら大笑いすると、ズレた眼鏡を元に戻した。
「残念だが私の魔力は尽きないよ。昨晩は綺麗に月が出ていたからね。魔力の補給は十分だ。
それにしても対した坊やだ。完璧な蜃気楼に気の流れで本体を感づかれないように、魔力を帯びた氷山でかく乱させるのも良いアイディアだ。
その辺の幻術師が放つ幻術よりも、この魔法の方が多くの人を騙せるだろうに。
殺すのは惜しい存在だ。ますます君のことが気にいったよ」
オメガは左腕を前にかざす。
左手から放たれた電撃は一直線にレインへと迸る。
咄嗟に氷壁を発動させると、氷の水分子が電撃を外へ流した。