王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
異端者
焼け野原。一面黒い世界には焦げ臭い嫌な臭いが漂い鼻孔を刺激する。
ここが広大な草原であることを忘れてしまいそうな風景の中、精霊を引き連れたオメガは地面にうつ伏せに倒れるレインを足で乱暴に仰向けに返した。
水の電気分解によって生まれた水素と酸素。
風の精霊の力によってそれらの分子をレインの周囲に圧縮させ、炎の精霊によって爆発を引き起こした。
その威力は凄まじいものだったが、あの爆発の中で少年は無事生きていた。
レインの身体を良く見ると、所々衣服に氷片が付着しており凍りついている個所がある。
「爆発の瞬間、自分自身を氷の結晶で閉じ込め直撃を防いだか。本当に君は優秀な魔術師だよ」
気を失っているレイン。
オメガは眠りを覚ますため、止血用の氷が砕けたレインの左肩を思いっきり踏みつぶした。
「うあぁぁぁ!」
「おはようレイン君。いい悲鳴だ。痛いかね? おや、傷口から血がにじみ出ているぞ?
急いで止血した方がいい。もっとも、今の君には止血するだけの魔力も残っていないようだがな」