王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

レインが包帯を巻いていたのは、一族と異なる金色の瞳を隠すためだけではなく、氷結魔法の威力を敢えて弱めるために使用していた。


極僅かな魔力でこの威力。万全な状態で術を発動させれば、周囲の自然環境に影響を与えかねない。


それこそ、熱帯地帯を氷河地帯に変えかえぬ力。


オメガの声はもう聞こえない。


氷像を除きこむと、灼銅の瞳は完全に色を失っていた。


「終わった……」


途端に全身の力が抜けた。


うつ伏せに倒れ、ゆっくりと仰向けになると、すでに真上と昇った太陽が飛びこんできた。


眩しさのあまり右腕で眼前を塞ぐ。


もう立つ体力も気力もない。


魔力はカラ。出血も酷く全身に痛みと気だるさの両方が襲う。


まどろむ意識の中、ザッザという霜も踏みしめる足音が響いた。
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