王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
二者択一
関節が砕けた左膝を庇いながら、左手にオメガのエメラルドグリーンの拳銃を握るユリエス。
右腕は使い物にならず、だらんと力なく垂れている。
けれど彼の瞳はなにかの決意に満ち溢れ、銃口をレインの眉間に向けていた。
「助けてくれてありがとうレイン。これで二度目だな」
いつもの温かみのある声色ではなく、淡々としたまるで業務のような冷たい言葉。
明るい彼は、ここにはいない。
そこにいるのは、一切の感情を封じた一人の男。
「お前もしかり、やはり王族は信用ならないな……」
「なっ!? 気づいてたのか!」
驚きの声。レインは口元に皮肉の笑みを浮かべる。
「マスターキーはアルベストゥスが王族のためだけに作った魔具だ。それは魔石鍵としてだけでなく、王族の血筋という証明書にもなる代物。お前が王族の血筋ということは最初から分かっていたさ」