王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「好きだけどいらない」
抑揚のない言葉。
傍から見れば捻くれた子どもだが、受け取らないのには理由がある。
幼い時から暗殺の脅威に晒されていたレインは、食料は必ず自分で用意していた。
他者からもらった物には毒が仕込まれている危険性があるからだ。
自分の命を守るための防衛手段。例え討伐隊のメンバーとはいえ、例外などにはなりえない。
そんなことなど分る筈がないセシエルは、苦笑して飴玉を元の場所に戻した。
協調性など皆無。
この先でドラゴンが待ち構えているというのに果たして大丈夫だろうか?
先頭を進むベリルは、小さく肩を竦めた。
その時だった。
エナが邪気を感じ取った瞬間。ベリルに向かって一本の矢が放たれた。