王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「マルタは私とユリがなんとかしておくので、今の内にその女性を」
「あいわかった。宜しく頼む」
もごもごと言いながら手足をバタつかせるマルタを二人は引きずる。
この場に残ったのは、女性を拘束しているレインと、襲われたベリル。そしてセシエル。
レインは氷の鎖を消すと、女性は咳き込みながら額を地に擦りつけた。
レインは冷徹な視線を送る。数多くの暗殺者を見てきたレインにとって、彼女の行動は暗殺者に有るまじき行為だった。
命乞いとは見苦しい。暗殺者の風上にもおけん。
「お許しください……私は奴らに頼まれただけで……」
「奴らとは反王府組織の者たちのことか?」
ベリルの質問に女性は何度もうなずく。
大粒の涙を流しながら、彼女は必死に言い訳をする。
「本当はやりたくなかったんです……だけど家族を人質に取られ仕方なく……どうか御命だけは!」