王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
理由はどうあれ暗殺者を逃がすなどレインからしたら考えられない。
敵は敵なのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
敵は排除する。それが唯一無二の対処法。
それに彼女が真実を言っているかは誰にも分らない。
仮に真実だとしても、反王府組織に通じている人物を信用などしてはならないのだ。
「気に入らないか?」
ベリルが不服そうにしているレインに話かける。
「ドラゴン討伐に色々と準備を進めてきたあんたが、女一人処理できない小心者とはな。まだ月灯りの方が度胸がある」
「殺さない覚悟という奴だ。あの女性は嫌々やらされていたのだからな。彼女に罪はない」
「罪はない? 馬鹿かあんたは。弓を引いた時点であの女には明らかな『殺意』があった。それが罪でないと言うのか? あの女は敵だ。僕たちの任務を妨げようとした敵でしかない」
ベリルは肩を竦める。と同時に、なぜこの少年もそこまで年不相応の対応を平然と行おうとするのか疑問に感じた。