王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
躊躇なく女性を処理しようとしていたが、とてもじゃないが十歳の少年が出来るようなことじゃない。
他の討伐隊の面々は比較的若かったが、レインはその中でも最年少だ。
レインの能力が優れているのは気の流れと先ほどの力を見ればわかる。とはいえ、幼すぎる子どもを普通の部族の長ならば招集に出すわけがない。
訳ありであることは間違いない。
優れた能力と闘い慣れた手際の良さ。
気にならないと言えば嘘になるが、人の過去を詮索する気はベリルにはない。
けれど、彼をこのままにするわけにはいかない。
無理に鬼になろうとしている。ベリルにはレインがそう見えていた。
「いいかレイン。この世界は一人一人の人間が一つの大きな世界を形成している。我々流浪の民はそれを『世界の気の流れ』と呼んでいるが、先ほど逃がしたあの女性もこの『世界の気の流れ』に身を置いている。
もしあの時女性を殺していたら『世界の気の流れ』が大きく変わることになるかも知れない。
気の流れの大きな変化は、世界の変革と同義。
それによって吉となるか凶となるかは私たち流浪の民にも分らない。だが私は、無暗に『世界の気の流れ』を変えてはいけないと思うのだ。例えそれが大悪党だとしても」