王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
月夜の闘い
「今日はこの辺りで野営にする」
日も暮れ始め、森の静かに闇に染まる。
夜道での移動は魔物に襲われる危険が高い。
それに反王府組織に狙われたばかりだ。真夜中の移動は慎むべき。
そう判断し、ベリルは馬に積ませた野営道具を取りだし始めた。
「キャンプみたいでちょっとワクワクするな」
「えー!? テントだと蚊とか入ってきた嫌なんだよねぇ……。そうだユリ、あんたのカギで家を出してよ!」
マルタは腰に吊るしてあるユリエスの色とりどりなカギを指さす。
ユリエスのカギは特殊な魔法石で造られており、魔力を注ぐことによって様々な魔法を発動することが可能だ。
ユリエスはカギを掴みながら、首を左右に振った。
「確かに召喚系のカギも存在するけど、そんな高価なもの持ってないって」
「うぅ……じゃあエナ! あんたの聖霊術で!」