王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「そんな術ないわよ。残念ね」
間髪いれずにそう告げた。
ガックシと肩を落とす。テントでの就寝は確定的。
仕方ないよね。そう簡単に宿屋が出来るわけないよね。
深い溜息をついて顔を上げると、マルタの瞳が飛び出んばかりに目を見開いた。
目の前に家がある。氷の可愛いお家が一軒。
二階建ての木造ならぬ氷造建築。
細かい細工も施されていて洒落ている。まるでメルヘン世界の建物のようだ。
無論これを作りだしたのは他ならぬレインである。
「す、すげぇ」
「これが噂に聞く氷眼の民の力なのね」
エナとユリエスも感嘆の声を漏らす。