王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

指を天に指しながら、マルタが言った。


空には瞬く星達と、美しい満月が顔を覗かしている。


月灯りの民にとって、月の満ち欠けは魔力に比例する。


今宵は満月。つまり、もっとも力が出せる夜。


「それではお願いできるかな?」


「まっかせといてー!」


金色の髪が輝きだす。


マルタは自分の右手を地面につけると、月の光から授かった魔力を惜しみなく大地へ放出した。


大地が揺れる。


森の木々は根元からなぎ倒され、地面には亀裂が走る。


物陰に隠れていた追手達は悲鳴をあげた。


木々に襲われ、人々が地割れに飲み込まれる。
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