王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
氷の処女
「うしっ! やっと終わったー!」
縄で追手を一纏めにし、一仕事終えたマルタはパンパンと手を叩いた。
六十名近い追手を相手にしたというのに、マルタとベリルは疲れの色を見せてはいない。
なれない近接戦闘に疲労したのか、セシエルはその場に腰を下ろして大きく息を吐いた。
「さすがに疲れた……。ところでエナちゃん、その魔法陣は一体?」
追手達の真下に展開される魔法陣。
聖霊術を使いエナが作り出したもの。
「これですか? 異空間転送の魔法陣です。王都の警護部隊にでも送りつけようと思って」
「異空間転送? 聞いたことがあるけど、こんな大勢を転送することなんて出来るのか?」
異空間転送は膨大な魔力とかなりの集中力が必要とされる高等魔法の中でもさらに上位に位置する魔法だ。
王都からここまで距離がある。しかもこの大人数。
転送するのは難しいはずだ。