王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
今度はエナの裏拳が顔面に入った。
「さて、こんな所で眠られては邪魔だ。流浪の二人、こいつを二階の寝室まで運べ」
相変わらずの命令口調。
ベリルは黙ってユリエスを背中に担ぐ。
大人しく言うことを聞いたのは、レインが目配せをしてきたからだ。
包帯で瞳を確認することは叶わないが、物言いたそうな表情で何かを感じ取ったのだ。
この場で話しづらいこと。
直感で理解した二人は、ユリエスを使って自然に二階の寝室まで移動した。
ユリエスに与えられた寝室に彼を寝かせて、レインが一番奥の部屋に二人を誘導する。
扉の向こうには、氷の女神が立っていた。
高さ二メートルほどの大きな女神の像。
中は空洞。前面は左右に開くようになっていて今は全開。扉の裏側には氷の刃が内部に向かって突き出している。