王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

片手でそれを受け取る。


それは魔法石が埋め込まれたブレスレット。


「あの男が持っていた物だ。見覚えがあるだろ?」


ベリルは黙る。


そのブレスレットは、あの女性にあげた物。


「あの女が僕達の居場所をリークしたんだ。お前の偽善のせいで、他のメンバーに危険が及んだ。不安要素を排除しなかったお前のせいでな」


「……だがそれは結果論でしかない。実際あの女性が居場所を教えたという証拠もなければ、あの男が女性から無理やり奪ったという可能性の方が高い」


「甘ちゃんの上に言いわけか? 見苦しいぞ」


押し黙る。


レインは氷の棒をベリルの喉元に付きたてると、声を低くしてこう告げる。


「お前は現実を見ているようで見ていない。自分が思い描いている幻想を現実だと思い込んでいるだけだ」
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