王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
棒が消える。
キラキラと細かな粒子が光に反射し、二人の間を淡く照らした。
「幻想(ファンタジー)は自分の頭の中だけにしておけ。理想は自分だけではなく他者をも殺す」
今回のようにな。
最後に一言付け加え、レインは部屋を後にする。
部屋の扉に手をかけると「だが」とベルリが口を開いた。
「それでも私は無暗に人を殺めるべきとは思わない。他人の未来を奪うことは、神にしか許されないことだ」
「……勝手にしていろ」
レインの後ろ姿が消えるのを確認すると、ベリルは氷の女神を一瞥し、近くにあった椅子にドスンと腰掛けた。
自重気味に苦笑する。
十歳の少年に論破されてしまった。やはりあの時のことを根に持っているのか?