王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

まだ体力が戻り切っていないのか、それとも寝起きで意識がハッキリしていないのか、レインはユリエスの発する言葉にキチンと応えていた。


普段なら「馬鹿」とか「無能」など毒の効いた単語が真っ先に頭についてくるが、十歳らしい柔らかな口調で言葉を紡ぐので、ユリエスは面白くなったようだ。


このチャンスを逃したら、二度とまともに話なんて出来ないかも。


この機会にこの少年のことを知ってみよう。


そう思ったユリエスはまずはなにから聞いてみようかと考えていると、焚火の火が弱って行った。


急いで薪を足すが、勢いが弱く薪に火がつかない。


腰のキーホルダーから朱色のカギを取り外すと、レインがパチンと指を鳴らした。


焚火に現れた小さな氷の結晶。


なんの変哲もない結晶に接している薪から小さな炎が付き、見る見る内に他の薪にも燃え移る。


氷で薪を燃やした? 馬鹿な。いくら氷結魔法に優れた一族だからって……。


「高圧相氷」
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