王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―
「いいかカギ覚えておけ。物事には必ず表と裏がある。正しい行いと思っていても、裏を返せばなにかを犠牲にしていることがほとんどだ。身分制度の廃止もな」
「……えーとつまり、どういうこと?」
呆れたようにレインは肩を落とす。
「身分制度の廃止によって、滅んだ一族もいるということさ」
レインは続けようとしたが、途中で思いとどまり言葉を飲み込んだ。
これ以上の発言は『表の歴史』を崩壊しかねない。
レインにとって国や歴史などどうでもいいことだが、これをきっかけにユリエスや他の討伐メンバーがレインに対して敵対意識を持つことを恐れたのだ。
敵意を持たれれば、任務に支障が生じる。
つまりそれは、人質に囚われている両親の危機にも繋がる。
そもそも、なんで僕がこんな奴に教えてやらなきゃいけないんだ。
レインは魚を食べる。
それが会話の打ち切りを宣言し、それを悟ったユリエスは不完全燃焼ながらも沈黙を貫いた。