ラブミーアゲイン


その言葉に目の前に立つ男の顔を見た。


にっこりと、相変わらず何を考えているのかわからない笑顔のまま、俺を見下ろしていた。

ゾクリ、と背筋が冷えあがる。




多分、この男には何もかもお見通しなのだろう。

適当にボコボコにされるために俺が殴ろうとしていることも、何もかも。

…それが、独りにならないためなのだと、多分知っている。


得体の知れない相手に、勝率がゼロの相手に、本気で挑むほど、俺が馬鹿なガキじゃないことにも、このわずかな時間で気付いたのだろう。

鋭い観察力。恐怖感を増す。


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