たった一人の親友へ
一瞬言葉を失った


「えっ?ちょっと待って。妊娠?!
ちゃんと避妊してなかったの?」


「三ヶ月前くらいに一回だけ……」


「検査薬は?陽性って出たの?」


泣きながらこくんと夏はうなずく


「あたし…あたし…どうすればいい?
こんなこと絶対たくちゃんには言えない。親にだって……
あたしたくちゃんに捨てられたら死んじゃう…
死んじゃうよぉ…」



そう言って泣く夏は


今にも消えてしまいそうで
とても小さな存在に見えた


あたしだって夏の気持ちは痛いほど分かる

言いたいのに…言えない秘密。




でもね


今回の場合は別だよ


お腹に


夏のお腹に新しい命が宿ってるんだよ?


「夏。たくちゃんに言わなくちゃだめだよ。
夏が一人で解決できる問題じゃない。
本当にお互いを想ってるならちゃんと向き合える。
ねっ?」




それでも夏は首をふり続けた



自分の身体を犠牲にしてまで好きなんだね


たくちゃん


こんなに夏が苦しんでるんだよ


助けてあげてよ


たくちゃん




< 105 / 265 >

この作品をシェア

pagetop