たった一人の親友へ
翔のお葬式はもう終わっていて


あたしの目の前にいた翔は


骨だけになっていた


白い石みたいな塊


人間ってこんなにもろいんだって思った瞬間


それでも不思議と涙は出なかった


まだ信じきれてなかったから


どうしても翔だと思えなかった


毎日当たり前のようにあったメールも電話も


なくなってしまったけれど


どうしてもまだ希望を持っていた


翔のお母さんがあたしのお見舞いに来てくれて


事故の時に散らばってしまった翔とあたしのネックレスを持ってきてくれた


ハートと星


刻まれた文字


持ち主をなくしてしまったそのネックレスは


ただ翔の死を証明しているようで


見ていられなかった


あんなに泣き虫だったあたしは


翔の死を聞いてから


一度も泣いていない


泣けない


いっそ涙を流してしまった方が


楽になれるのだろうか?


翔のお母さんは最後に手紙をくれた


その手紙は、あの日翔があたしにくれた手紙


読む勇気なんてないあたしは


もう3日もその手紙を引き出しにいれたままにしていた

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