たった一人の親友へ
手紙を手にしては戻す


さっきからその繰り返し


だって読んじゃったら


もうあたしの前に翔が生きてるってことを証明するものがなくなっちゃうから


ガラッ


病室が空く


そこにいたのは隆也だった


「久しぶり」


そう言った隆也は少し遠慮気味に手を上げ


笑っていた


「久しぶり」


「体調はどう?

色々大変だったな。」


「うん。」


「翔…

気の毒だったよな。」


「うん。」


「さな、大丈夫か?」


「うん。」


重い空気が漂う病室

< 220 / 265 >

この作品をシェア

pagetop