たった一人の親友へ
翔のお母さんは


あたしを翔の部屋へ連れていってくれた


「あの事故の日のままなのよ」


翔の部屋には一度行ったことがあったけど


その時とは随分変わってた


「何にもないけど…

ゆっくりしていってね」


そう言って翔のお母さんは部屋から出ていった


部屋からは翔のよくつけてた香水の匂いがして


今そこに翔がいるような気がした


涙がまた出てくる




“この泣き虫っ”


そうやってちょっと怒りながら


必ず優しく抱きしめてくれたよね




目の前にあたしと翔の写真が飾ってあった


二人とも笑顔で


写真に写ってる


この頃のあたしたちは


今こんなことになるなんて


これっぽっちも思ってない


幸せだったあの日々




「翔…

ごめんね。

あたしだけがこうして生きてて…

あたし…

翔の分も精一杯頑張って生きるから…

許してくれる?

あたし…

頑張るよ…

だからずっと見守っててね」

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