たった一人の親友へ

家族

春休みに入ってもあたしは
ある理由からろくに家に帰ろうとはせず


毎日和歌子の家や翔の事務所を転々とした


和歌子は高校になったら一人暮らしをすると決めていたので

大きなマンションに夢の一人暮らし


この時ほど和歌子をうらやましく思ったことはないかもしれない





あの事件以来、母親とはほとんど口をきかなくなった

母親にとってあたしは、いてもいなくても同じ存在で

その分、母の期待は妹の友香にかけられた





事故が起きてすぐの頃、友香は母の過剰なまでの愛情に戸惑ったのか

よくあたしに助けを求めて来た


でもその時のあたしは自分自身に余裕がなくて

友香のことが妬ましくもあったんだと思う


友香の心の叫びに気付かなかった


気付きたくもなかったんだと思う





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