泪の花。

「なーにしてるの？」


間抜けな声と共に、私が呼び出された原因の男がやってきた。




「カイトくーん」


と黄色い声が飛び交う中、私はその男をひたすら睨んでいた。


この隙に、とんずらしてしまおうとした瞬間、またしても


『逃がさない』


とニッコリと笑い、掴まれてしまった。


先ほどの事もあり、溜まりに溜まっていた感情は目の前のこの男へ全て注がれた。


『触るな…一体何様なんだよ…このろくでなし…』


酷い事を言っているとも思わず、本当にイヤなモノを見る目で睨んだ。



怯んだのか、イヤがっているとやっと気付いたのか定かじゃないが私の手を離した。

その場から一刻も早く消え去りたくて早足で教室へと向かった。




ゆっくりと怒りが収まった頃…

一応助けてくれた人に私はお礼も言わなかったのだと気付いた。


だが…アイツが蒔いた種だとも思わずにはいられなかった。