泪の花。
「優しい姉になりたかったのに…」


なんで…身内の優しさというのは、こんなにも分かりにくいものなのだろう?

凄く、凄く大切にされているのに…


はたから見れば…すぐ分かるのに


初美…お前のお姉さんはすっげー素敵な人だぞ。


「あの…初美、言ってましたよ。優しいってのは…言葉だけじゃないって。言葉で否定的な事を言っても、それが真意だと限らない事を、初美はよく知っています。誰よりも疑い深い分、誰よりも人の気持ちをよく考えているから…」



「あなた…ホントに初美をよく見てるのね」


と少し呆れ気味に言われたが、その表情には笑顔が見えた。



「そりゃもう。」


「でも、あなたは自分の気持ちは分かっても、周りの気持ちには鈍感のようね」



「え?」



「気にしないで、時期に分かるわ」



全てを見透かされているように微笑む



「時期に…?」



「じゃあ、お休みなさい。また会うかもね…」



軽々と初美を抱えたまま家へ入っていくお姉さんを見ながら、俺は必要なかったんじゃないかと思わずにはいられかった。



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