泪の花。
その日は、いつものように垣根の間からこっそり覗いていて、あの子は何か買い物を頼まれた様子で玄関を出て行った…


すかさず、あの子から見えないように隠れた時だった。



『何だい、また来たのか?坊主。』


と話かけられ…ニィっと笑う…ばあさん。



まさか覗き見してる事がバレてるとも思わず、初めて声をかけられた事にも驚き、シリモチをついてしまった。



『ちょっと、こっち来てみ?』



怒られるのか?


と思いつつ口があまり良い方ではない俺は



「んだよ、ババァ…」



『ババァ?…じゃねぇだろ、由貴さんと呼べ。』


人を恐ろしいなんて思った事ないのに、あまりの迫力にたじろぎながら



「ハイ。」



としか言えなかった。


ばぁちゃんと言うのも許してくれない、ババァ…

由貴さんは、笑顔がアイツにそっくりで…


アイツがいない時を見計らって(もちろん居る時は覗いて)話をした。


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