泪の花。
時は過ぎ、

中学3年になった。


由貴さんが亡くなってから一年が経ち…


俺は、前以上にずっとアイツを見てきた。


この一年、アイツが怒る所も、泣き顔も、笑顔も…


見る事は出来なかった。


アイツにとって由貴さんは…太陽みたいな、ヒダマリのような存在だったんだ。



だから、太陽を失くした花は、もう咲かなくなってしまった。



アイツの笑顔は見れなくなった。





由貴さんが亡くなった日…俺は名前を聞かれて、答えたのに、結局一度も

“カイト”


と呼ばずに逝ってしまった。



今更なのに、何故かすごく悔しくて…


そんな事を考えている時だった。


俯きながら歩いてきたアイツが俺にぶつかったんだ。


アイツを見つめるだけじゃなくなって、初めて言葉を交わした記念すべき日に…



とっさに出たアイツへの言葉は



『オイ…お前…海斗って呼んでみろよ。』


自分が思っている以上に心残りだったらしい…


とりあえず、第一印象最悪確定。


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