泪の花。
由貴さんが亡くなってから俺は、急に成長が早くなって、一年で15センチ伸び…



声も顔つきもスゴく変化した。



まるで、アイツにばれてはいけない。


と…由貴さんが、急かしたようにも思えた。



必死になって隠すような事ではないけれど…



アイツが、自分から向き合おうとするまで、秘密にしようと心に決めた。



由貴さんがいなくなってから、初めて初美が笑ってくれたあの日…



胸の奥をぎゅっーと掴まれた気がして、知らない間に涙が溢れていた。



アイツを騙した事に、罪悪感は拭えなかったけど、大きな収穫があった。



その日


紫色のあの花を持ち、真っ直ぐ由貴さんの墓前へ行き報告をした。



「由貴さん、初美笑ったよ。まだ…泣く事はできないけれど…大きな進歩だよな?」


ザワザワと風が吹き、由貴さんが返事をしたような気がした。


どんなに憎まれたって、恨まれたって、必ず初美の感情を取り戻してみせる。


由貴さんが亡くなった日、帰り道の大きな夕日に誓ったんだ。
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