泪の花。
「私はね、人が死ぬって事は誰かに自分を託すって事だと思ってる。」


『託す?』


「うん。けれど、そんな事を直接言ったら重荷になるかもしれない。でも、言わなくたって…死んでいった人の“思い”は生きている人の心に、ちゃんとおいていけるんだと思うの。初美ちゃんはおばあちゃんから、ちゃんと貰ってるよ。心を…」


そう言って私の胸を指さした。


『祖母はホントに優しかったんです…大好きだった。私、もっともっと沢山…話したかった。』



無意識に…



次々と言葉が口をついて出ていた。


「そう思ってる時は自分1人の心じゃない。あなたの中のおばあちゃんもそう願ってるから、忘れたくない過去にしたくないって思うのだって、おばあちゃんがあなたから忘れられるのが寂しいからなんじゃないかしら?ねぇ、初美さん…あなたは1人なんかじゃないでしょ?」


ゆっくりと…目を瞑るとそこには、笑っているおばあちゃんが見えた。



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